この度は、両氏がブループラネット賞を受賞されましたことを、心からお慶び申し上げます。
私たちは今、コロナと気候危機という2つの危機に直面しています。こうした時代の転換点において、私たちは、コロナ危機を生態系からの重大なメッセージと受け止め、コロナ前の経済社会に戻るのではなく、持続可能で強靱な経済社会にリデザイン(再設計)していく必要があります。
リデザインに向けた環境政策を進める上で、科学的知見の果たす役割の重要性は言うまでもありません。しかし、さらに必要なのは、そうした知見を各国の政策決定者や一般の人々にわかりやすく広めることです。これまで、地球環境問題への人々の関心を高めることに長年貢献されてきたお二人のご功績に深く感謝申し上げるとともに心から敬意を表します。
ティルマン教授は、食習慣・健康・環境のトリレンマを地球規模の問題と捉え、人間の健康にも地球環境にもよい農業の実践と食習慣への移行を提唱されてきました。
今日直面している気候変動や生物多様性保全などは、地球規模の課題ですが、一人一人の生活や行動様式を変える日々の小さな取組の積み重ねが大きな社会の変化となって、地球を守ることにつながると考えています。
この意味でも、食事や健康という誰にでも身近な問題を、地球環境問題に結びつけた同氏の研究は意義深いと言えます。また、同氏の研究は、昨年発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の土地関係特別報告書でも何度も引用されるなど、世界的にも大きな影響を与えています。
スチュアート博士は、国際的に権威のある「IUCN(国際自然保護連合)絶滅危惧種レッドリスト」の危険度による区分や定量的な基準の開発を主導されるなど、最新の科学的知見をこの分野に取り込んでこられました。
レッドリストは、絶滅のおそれのある野生動植物種の保護のためのワシントン条約や、愛知目標の進捗状況の評価など、様々な場で政策の基盤として活用されています。
このような業績は、指標化して測定することが特に難しい生物多様性の分野において、保全すべき種を特定するための具体的な判断基準を明らかにする上で、非常に重要な貢献をしました。
来年の生物多様性条約COP15における新しい生物多様性枠組みの検討においても、こういった功績は大きな意味を持つと考えられます。
最後になりますが、今後も、ブループラネット賞を通じて、地球環境問題に関する科学的知見の深化と普及が進むことをお祈りするとともに、今回の受賞者のお二人の益々のご活躍を祈念いたしまして、私からのお祝いのメッセージとさせていただきます。
環境大臣 小泉進次郎