2020 旭硝子財団 助成研究発表会 要旨集
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層層状状有有機機化化合合物物をを活活用用ししたた外外部部刺刺激激蓄蓄積積量量のの定定量量的的ななイイメメーージジンンググ 慶應義塾大学理工学部 准教授 緒明 佑哉 1. 研究の目的と背景 本研究は、摩擦力や熱などの「外部刺激がどれだけ印加されたかの蓄積量」を、「層状ポリジアセチレン(PDA)結晶とその層間へ導入されたゲストの複合体」を活用することで定量的にイメージングする技術を確立することを目指すものである(図1)。 図図11.本研究の目的と概要 材料へ印加された外部刺激の蓄積量を定量的に把握することは、材料の劣化や寿命と関連して極めて重要である。近年、機械的刺激に応答した蛍光色の変化を起こす材料など、メカノ応答材料が注目を集めている[1-3]。しかし、外部刺激の蓄積量や強度を定量的に評価する技術は、十分確立されていない。本研究では、層状PDA複合体の調節可能な刺激応答性の色変化挙動を制御する方法の確立、それらの材料のデバイス化を通じ、摩擦・加熱・引張・圧縮など熱・光・力に関連した様々な外部刺激の蓄積量すなわち「強さ」と「量」を、色で定量的に可視化することを目指した。 層状PDAは、外部刺激によるアルキル側鎖の乱れによって共役主鎖がねじれ、有効共役長の変化に伴って色変化を起こすことが知られている[4–6]。我々のグループの先行研究では、層状PDAの層間に金属イオンや有機カチオンを導入することで、層状PDAの刺激応答性色変化挙動が制御できることを見出していた[7,8]。これまで開拓してきた手法では、層状のモノマー結晶の層間へゲスト分子をインターカレーションし、その後の重合によって層状PDA/有機分子複合体を得ていた。しかし、この方法では導入できる分子が限られており、本研究ではホスト層とゲスト分子を一段階で自己組織的に複合して層状構造を得る手法の確立を目指した。また、デバイス化やその応用については未開拓であり、本研究では様々な基板・基材へのコーティングとそれらを利用した多様な外部刺激の可視・定量化を目指した。 2. 研究内容 (実験、結果と考察) 様々なゲスト分子を複合した層状PDAを作製する新しい手法を確立した。前駆体溶液中にジアセチレンモノマーとゲスト分子を溶解させ、溶媒を蒸発させることで自己組織的に一段階で層状複合体を得る手法を見出した[9]。本合成手法により、紙基板や綿などの2次元や3次元の基板・基材上に均一に層状PDAをコーティングすることができ、デバイス化が可能となった。この紙基板デバイス上の層状PDAにまさつ力を印加すると、まさつ力の強さと回数に応じた色変化を起こし、まさつ力を可視化および比色定量化することができた。層間に導入するゲストを変化させることで刺激応答性を調節すると、まさつ力に対する応答性も変化した。これにより、筆圧のような比較的大きなまさつ力から[9]、歯ブラシのブラッシングのような比較的小さなまさつ力までを可視・定量化することができた(図2) [10]。 図2.層状PDA/アミン複合体の自己組織化による合成と紙基板へのコーティングによるまさつ力の可視・定量化の概要.(a) 層状PDA/アミン複合体の紙基板へのコーティングとまさつ力に対する色変化.(b) まさつ力と赤色強度の相関関係.(c) 筆圧およびブラッシングの圧力の可視定量化。文献9,10より許可を得て掲載. −42−発表番号 21〔中間発表〕

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