Shutterstock / Osaze Cuomo
18世紀後半に起こった産業革命は、社会構造や人々の生活に大きな変化をもたらした。
以来、電気や石油をエネルギー源とする重化学工業の発展、原子力エネルギーの利用、デジタル革命と、産業は加速度的に発展を続け、一方で自然環境の破壊、生物多様性の喪失といった深刻な問題を引き起こしてきた。
ブループラネット賞の受賞が決まったIPBESは、「現状を放置し続けると、地球上の全動植物の8分の1ほどにあたる約100万種が、数十年以内に絶滅する可能性がある」と警鐘を鳴らす。
「恐竜の絶滅を始めとして、これまで地球では、隕石の衝突や気候変動などによって、5回の絶滅期があったと言われています。そして現在言われているのが、"第6の絶滅期"に入ったという説。
恐ろしいのは、これまでの絶滅期と比較して、絶滅の速度が圧倒的に速い(一定時間に絶滅する種の数が多い)ということです。
そういった問題に気づき始めたからこそ、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルを目指そうという機運が高まっています。
後の人々から見ると、今この時代が、産業革命以来の大きな転換期になるのではないでしょうか」(足立氏)
そんな中で足立氏が期待するのは、日本のリーダーシップだ。
先進国内でも圧倒的に豊かな自然環境を持つ日本。「自然を上手く活用したビジネスを作ることができれば、環境分野で世界をリードできるはず。日本企業にはぜひ、その方向へと舵を切ってほしい」と話す。
企業にとって、生物多様性を守るための取り組みが遅れることはリスクになる一方で、正しい情報を得て、スピーディーに対応できればビジネスチャンスにもなる。
ここからの企業の動き方が、社会、ひいては地球の未来にとっても重要な一歩となるはずだ。まさに今、我々は大きな岐路に立っている。
Profile
足立直樹(あだち・なおき)氏
東京大学理学部、同大学院で生態学を学び、博士(理学)号取得。1995年から2002年までは国立環境研究所で熱帯林の研究に従事する。1999年から3年間のマレーシア森林研究所勤務の後、コンサルタントとして独立。現在はレスポンスアビリティ代表取締役、企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長など。企業による生物多様性の保全の推進に力を入れ、多くの先進企業の調達や経営をサステナブルにしてきた。現在は特に、自然を活用したビジネスの推進や地域を活性化することに注力する。新聞、雑誌、Webに掲載記事、寄稿文等多数。
Business Insider Japan掲載記事
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