2024 (33rd)
Blue Planet Prize Laureates
2024年(第33回)
ブループラネット賞受賞者
ロバート・コスタンザ教授(米国・オーストラリア)
1950年9月14日 米国生まれ
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、グローバル・プロスペリティ研究所
1997年の論文で、自然環境が人間に提供する生態系サービス※1の経済的価値が、当時の世界のGDP総額を上回っていることを初めて実証し、それまで過小評価されていた生態系サービスの重要性を世界に示した。経済は社会と有限な生物圏に組み込まれていると考える「生態経済学」という新しい学術分野の共同創設者でもあり、生態系が持続可能である幸福な社会の実現を積極的に提唱している。
※1 自然の生態系が人間にもたらす恩恵のこと。例:水供給、気候の調節、景観、受粉など。
受賞の辞
2024年ブループラネット賞の受賞者として選ばれたことは、誠に光栄であり、身の引き締まる思いです。
旭硝子財団は、私の知る研究者を含め、より良い世界を創るという共通の目標を持つ多くの卓越した個人や団体の活動を支援されてきました。
今回、このような方々の仲間入りができることを大変喜ばしく思います。
私の研究は、地球を統合された複雑なシステムとして捉えることに重点を置いています。経済は社会や自然の中に組み込まれており、この統合的な視点なしには、システムを理解したり効果的に管理したりすることができません。それが、私が創設に携わった生態経済学という学際分野の本質です。特に、私は自然資本とそれが提供する生態系サービスの理解、モデル化、価値評価に取り組んできました。
その結果、自然資本や生態系サービスによる人間の持続可能な幸福への寄与は、GDPで表す市場で取引される財・サービスの貢献をはるかに上回っていることを示しました。
また、人間と自然の統合的な幸福を理解、評価し、そして、持続可能な幸福をもたらし、そこに至るために必要な変革を促すことができるような共通な世界観を作り出すことにも取り組んできました。
ブループラネット賞を受賞することで、より良く、より公平で、豊かで持続可能な未来を目指す世界中の人々と協力し、引き続き研究を進める所存です。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム (IPBES)
設立:2012年4月21日(事務局:ドイツ)
生物多様性、生態系サービス、そして自然が人間にもたらすものについての知見と科学における最先端の国際機関である。IPBESの画期的な報告書は、様々な規模、分野、知識体系において科学に基づいた政策や行動の基盤となっている。企業による環境への影響の評価、開示、改善も始まっており、IPBESの評価報告書は、企業のサステナビリティ戦略やESG(環境、社会、ガバナンス)活動の構築に役立てられている。
受賞の辞
2024年ブループラネット賞をIPBESがいただくことになり、誠に光栄に存じます。
この権威ある賞の栄誉は、専門知識、時間、そして熱意を惜しみなく私たちの活動に注いでくださった世界中の何千人もの科学者や知識保持者のものです。
また、揺るぎないご支援をいただいている146の加盟国と、IPBESの使命を遂行する上で不可欠な幅広い関係機関の皆さまにも深く感謝申し上げます。
今回の受賞は、より良い科学、エビデンス、そして行動の選択肢を通じて、生物多様性と自然が人間にもたらす恩恵の保全と回復の重要性が世界的に認められたことを意味します。
旭硝子財団がこの栄誉を与えてくださり、また私たちの取り組みを支援してくださることに深く感謝いたします。この栄誉を励みとして、これからも人と自然のための科学と政策の強化に努めてまいります。
受賞者記念講演会について
受賞者による記念講演会を2024年10月24日(木)に東京大学で、26日(土)に京都大学で開催いたします。
詳細は8月ごろにホームページでお知らせします。