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30周年(2022年)
記念シンポジウム(8月):講演
8月25日、ブループラネット賞創設30周年記念シンポジウム(共催・持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム〈JYPS〉、協力・朝日新聞社)を東京・築地の浜離宮朝日ホールで開催しました。
前半は、過去3名の受賞者による記念講演が行われました。
登壇者
エリック・ランバン教授(2019年受賞者)ルーヴァン・カトリック大学教授、スタンフォード大学教授・学部長
ブライアン・ウォーカー教授(2018年受賞者)オーストラリア国立大学名誉教授 リモート参加
デイビッド・ティルマン教授(2019年受賞者)ミネソタ大学 教授、カリフォルニア大学サンタバーバラ校 卓越教授 ビデオ講演記念シンポジウム(8月):提言発表
後半では最初にユースによる提言発表と歴代受賞者による共同提言発表が行われました。
ユースによる共同提言は、2022年1月から4月にかけて行ったブループラネット賞の3名の受賞者と、ユースコアメンバーを中心とした若者たちとの対話をもとに作成されたものです。
ユース提言作成に向け、受賞者とユースが議論してきた様子はこちら
■■■ユース環境提言■■■
異常気象を報じるニュースで「観測史上最高」「記録的」といった言葉を日常的に聞かされています。熱波、豪雨、台風、干ばつなどの災害によって、いつも世界のどこかで傷つき、暮らしを奪われ、生命を失っている人々がいます。現在の温暖化対策のレベルではパリ協定1.5℃目標を達成できる見込みはなく、気候危機はますます深刻化し、将来世代が平和で健やかに暮らすことのできる権利を損なうことになります。
一方、私たちの身近では高齢化や過疎化により人の手が入らなくなった里山が荒れ、競争に強い生きものしか生息できない環境が広がっています。生物多様性の保全は、人類が生きていくために守るべきものですが、私たちはそれだけを主目的としなければならないのではありません。一人ひとりのかなえたい夢を追いかけることが「結果として」生物多様性の保全につながるなら、それで良いと私たちは考えます。
大切なのは誰もが主体的に関わり、今だけでなく未来の地球のために選択すること。そのためにとるべき行動を、私たちはここに提言します。
ユース環境提言起草メンバー
【気候変動問題に対する提言】
パリ協定1.5℃目標達成につながる温室効果ガス排出削減目標の設定を政府・自治体・企業・大学に求める
現在世代が不十分な温室効果ガス排出削減目標を設定することは、次の世代がその分、より大きな排出削減の責任を負うことを意味します。日本政府や自治体が目標を引き上げ、政策を強化し、石炭火力発電や鉄鋼業・化学などの大規模排出源の対策強化を促す必要があります。また、大規模排出源である企業や大学も抜本的に行動を強化すべきです。その対策は原子力やCCUS、アンモニア混焼などの不確実でリスクの高い解決策ではなく、省エネルギーと再生可能エネルギー100%への公正な移行が中心であるべきです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、パリ協定の1.5℃目標のためには、2050年までにCO₂排出量を実質ゼロにし、その他の温室効果ガスも大幅に削減すること、そして2030年までにCO₂排出量を約半減させることが必要と分析しています。Climate Action Trackerによれば、日本政府が掲げる温室効果ガス排出削減目標(2013年度比で2030年度までに46~50%削減)では、パリ協定の1.5℃目標の達成には不十分で、これを62%削減へと引き上げる必要があります。一般市民の行動も重要ですが、日本全体における家庭と中小企業の排出割合は28.9%であり、それだけで2030年までの62%削減や2050年カーボンニュートラルが実現できないことは明らかです。
自宅や学校・職場・自治体の「電気」を切り替える
CO₂排出量が少なく、原子力リスクもなく、自然環境破壊リスクを最小化し、再生可能エネルギー中心の電気を販売している電力会社に契約を切り替えましょう。自宅での切り替えはもちろん、通っている学校、職場、自分の住む自治体へと広げていくことも大切です。
コンセントのこちら側での節電は大切です。しかし、コンセントの向こう側の脱炭素も重要です。同じ発電量でも石炭火力発電と太陽光発電ではCO₂排出量が数十倍も違います。電力会社が石炭火力発電を拡大させたら、一般家庭での節電努力によるCO₂排出削減は水の泡になってしまいます。日本国内の石炭火力発電所は163基が運転中、8基が計画中・建設中です。
また、2011年の東京電力福島第一原発事故、2022年のロシア軍によるチョルノービリとザポリージャの原発への脅威を思い起こしても、原子力に甚大な安全リスクがあることは明らかです。また、次世代に核廃棄物の負担を押し付ける構造的な問題は解決の見通しが全く立っていません。再生可能エネルギーにも自然破壊の懸念はありますが、化石エネルギーや原発のそれと比べるとはるかに小さいと言えます。ラッペーンランタ工科大学の研究チームなどが示しているように、省エネルギーを徹底した上でどうしても必要なエネルギー需要を再生可能エネルギー100%で賄うことは可能で、現実的です。
「食」を変えてより健康に・より低炭素に
個人の行動変容に加えて行政や企業が環境負荷の高い食生活を改め、より健康的で持続可能な食料システムへの転換を推し進めるべきです。肉食(特に牛肉)を減らして植物性たんぱく質に切り替えること、空輸された食料の利用を減らすこと、パーム油などにつきまとう環境問題を解決すること、それらを個人で実践するとともに、取り組みを広げるように行政や企業に求めます。特に環境負荷の高い食料については税を導入して消費を抑制することも検討すべきです(肉食税など)。
食料の輸送・保管にかかるエネルギー、土地利用及び土地利用変化など、食料関連のCO₂排出量は膨大です。研究によれば、人為的な温室効果ガス排出量の約3分の1は食料システムによるものとされています。特に牛肉は、げっぷ等によるメタン排出が多く、温室効果ガス排出量が大きいことはよく知られています。また、畜産のための土地利用変化による自然環境破壊も深刻です。さらに、肉食を減らすことは、気候変動や自然生態系保全のみならず、人の健康にも良いことがわかっています(子どもの場合はビタミンB12が必要なので赤肉が必要という指摘もあります)。欧米を中心に先進国で肉の大量消費が続いており、貧しい途上国では非常に少ないという南北格差の問題もあります。
「意識的に控える」が未来を変える
「環境問題」というとあまりに大きすぎる問題で、自分一人がなにか行動したところで特に効果はないと思ってしまいがちです。しかし、そんなことはありません。Oxfamによると、世界で最も裕福な10%の人々が、全CO₂排出量の半分を排出しているそうです。ここに該当する日本人は、世界では中国、アメリカにつぐ水準。つまり、私たちが行動に変化を起こすことは、私たちが思っているよりも大きな気候危機への影響力を持っているのです。 なかでも例えば、安価で大量に生産されるうえ、すぐに捨てられてしまいがちなことが問題視されているファストファッションの消費を抑えることや、使い捨て製品の使用を控えることは、気候変動対策として有効です。またそれを生産する企業に対しても、環境負荷の大きい製品は買わないというメッセージを間接的に伝えることで変わっていくことにつながります。
ペットボトルやプラスチック包装の消費は「リデュース・リユース・リサイクル」と言われますが、なかでも一番環境負荷が低いのは「リデュース」つまり、そもそも使わない、消費しない、生産しないことです。必要がなければ買わないことを第一に行動するようにしましょう。
気候変動を授業に 企業は社員研修を
今後、さらに深刻な被害を受ける次世代への気候変動教育は重要な意味をなします。
現在、小中高で環境問題に対する授業は取り入れられていますが、さらなる強化が必要です。ティッピング・ポイントについての教育もすべての子どもたちが受けるべきです。大学や専門学校においても気候変動への対策について、環境配慮についての授業の導入が義務化されるべきです。
また、学生のみではなく、実際に気候変動対策を取れる立場にある大人への教育も重要です。刻々と更新される地球の状況を取り入れるべく、企業内においても積極的に勉強会を開くなどの行動が必要です。
わたしたちはその行動をとっていることを周りに広めていく。「周りも別に行動してないし、気候変動もなんとかなるだろう」と錯覚してしまっているのが今の社会です。
【生物多様性の保全に対する提言】
大切なのはいわゆる"大自然"だけではない
生物多様性の保全と聞いてイメージするのは、熱帯雨林のような原生林や絶滅危惧種の保全を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。もちろんそれも大切です。2010年に開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、陸域の17%、海域の10%を保護区とする目標が掲げられました。しかし、生態系は地球上の多様な生物が互いに影響し、補完し合うことで維持されています。森から海まですべての生きものがつながることで、人々が幸せに生活を送るために必要な自然の基盤が形作られているのです。そこで、近年注目されているのが「OECM(その他の効果的な地域をベースとする保全手段)」です。環境の保全を目的とする保護区ではなく、里山のように人間の居住や農業などの生産活動が営まれる"その他"の地域を指し、このような地域を保全することで、さらに効果的な保全につなげる狙いです。2021年のCOP15では、そのOECMも含めて生物多様性にとって重要な陸域と海域の30%を2030年までに保全するという目標が掲げられました。
そう、生物多様性をより豊かにするために必要なのは、大自然だけではなく、身の回りの自然まで、あらゆる環境をよりよいものにしていくことなのです。
失われた都市の自然、ベランダから始める回復
難しい話はここまでにして、ここで楽しい生物多様性保全を紹介しましょう。生物多様性の保全は決して他人事ではなく、すでに開発されてしまった場所でも、自宅でも誰でもできます。例えば、ベランダに植木鉢を置く。その地域に在来の植物を植えてもいいし、周りに緑地のある地域や鳥が多くいる地域なら、土を入れてそのまま放置でも構いません。風や鳥が植物の種を運んでくるでしょう。中身は芽吹いてからのお楽しみです。植木を置いたら、その植木をしばらく観察してみましょう。きっとミツバチやチョウなど様々な生きものが利用してくれるようになるでしょう。ベランダにその地域にあった植物を植えることで、生きものたちが"寄り道できる場"を作ることができるのです。その地域本来の生態系の回復をちょっとした工夫で助けることができます。夏休みの自由研究にいかがでしょうか。
温暖化によって高山帯の生物や極地の生物は追い込まれ、南方の生きものが北上し、生態系が変わりつつあります。注意が必要な部分もありますが、気候変動対策を講じることも生物多様性をより豊かにするためにできることの一つなのです。 都市部では多くの自然が失われました。地方でも人手が加わらなくなり、多様性の失われた自然が取り残されてしまっています。しかし、失われたから「もうダメ」ではありません。そこから、より良い方向に変えることができるのです。
スーパーでもできる生物多様性への配慮
地産地消や認証マーク製品の購入など、消費者としてできることもたくさんあります。現在私たちの身の回りには、生物多様性に配慮して生産されたことを示す認証製品が増えています。環境や地域社会に配慮した管理・伐採を行う森林から生産された木材であることを示す「FSCマーク」、減少傾向にある水産資源の回復を目指し、持続可能で環境に配慮した漁業を表す「MSCマーク」、生態系や農薬の管理に関する基準を満たした認証農園の産物に付される「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」などがその例です。
私たち消費者がこうした製品を積極的に選ぶことも、生物多様性保全の取り組みを後押しすることにつながります。購入するのはちょっと...という方もいるでしょう。それならまず、認証マークを探してみてはいかがでしょうか。マークを見つけたら、環境問題を少し意識するでしょう。あなたがまずその課題に関心を持つことが大きな一歩なのです。私たちの生活を支えながら、保全を頑張ってくれている生産者の方々に思いをはせるのもいいことです。パッケージ化された製品の向こう側に目を向けること、農業・林業・畜水産業の実態を知ることもまた大きな一歩です。ほかにも、子どもたちと一緒に認証マークを探してみるのも、かくれんぼのようできっと楽しんでくれるでしょう。それが、子どもたちへの環境教育につながり、将来の担い手を育てるきっかけになるかもしれません。あなたの行動をほんの少し自然思いに変えてみることが、目の前にある世界をもっと豊かなものに変えていくことにつながっていくのです。
この提言は以下のメンバーによって執筆され、他のユースメンバーの確認を経て掲載しています。
【気候変動】
国際環境NGO 350.org Japan 伊与田昌慶さん
Fridays For Future Yokosuka 原有穂さん
一般社団法人SWiTCH 佐座マナさん
【生物多様性】
生物多様性わかものネットワーク 小林海瑠さん、稲場一華さん
■■■3名のブループラネット賞受賞者による環境問題に関する共同提言■■■
誰ひとり取り残さない、自然と積極的に関わる未来の実現に向けて、持続可能性の3つの柱を軸として作られた社会を想像してみてください。そこでは自然は保全され、私たちの生活、農地、都市に再び取り込まれているでしょう。社会的正義と社会的平等が政治的決断を下す基本的な価値となり、今日広まっている極端な形の社会的不平等は回避されるでしょう。誰もが自らの熱意や可能性を実現し、価値ある人生を送るために、すべての人々に多様な経済的機会がもたらされるでしょう。そのような社会は、共感、正義、持続可能性、そして知識といった基本的な価値観を含むものとなるでしょう。
このようなビジョンを実現するための過程では、私たちは価値観と目標に焦点を合わせ続けなければなりません。楽観的思考法を養い、計り知れない想像力を働かせることで、社会が作り出す文化と調和する解決策を私たちは見い出せるでしょう。そうすれば、短期間でも上手くいくでしょうし、継続性も担保できます。出発点は、これまで私たちが歩んできたやり方は不安定で持続不可能であり、未来の世代を危険にさらしていると認識することです。将来への不安があると、私たちはこれから進むべき確実で最善の道を定めることができなくなります。しかし私たちは、どんな未来を望まないのかなら容易にわかります。したがって、元に戻れなくなるかもしれない、望ましくない道筋を避けることができるのです。望まない未来がわかれば、私たちはいくつかの許容範囲内の道筋にとどまることができます。そして、その中の特別な「最善」の道筋は、文化的な価値観やその時点での世界情勢で決まることになるでしょう。
持続可能に変化していくための多くの方法は広く知られています。たとえば、再生可能エネルギーへの切り替え、健康にも環境にも良い食生活への移行、建物の高効率化、都市の緑化、保護地域ネットワークを拡大した上での生物多様性の保全、低所得国の農家が持続的に生産性を向上できるようにするための支援、自動車の電気化、森林・農地の管理による生物多様性と生態系サービス提供の強化、より公正な世界を目指す投資、対立ではなく協力による解決の奨励などです。多くのイノベーションがすでに創出されていますが、その実践については速やかにスケールアップする必要があります。これと同時に、今ある持続不可能なシステムの段階的廃止を積極的に進める必要があります。これらを進めていく過程では、多くのブレークスルー、失敗、そして驚きが待ち受けているでしょう。だからこそ私たちの世界にレジリエンスを確立する必要性があるのです。
求められる変化の中には困難を伴うものもあるでしょう。変化は複雑なシステムの中で起こるため、レジリエンスが確立する前には、小さな混乱が「崩壊」を引き起こし、その後に速やかに再構築される可能性が高いでしょう。短いながらこの再構築の段階こそが、重大な変化が起こりうる時です。こうした変化の様式を理解し、もたらされる機会に備えることが、劇的な変化にうまく対応する上で重要になります。 私たちの社会や自然との関係におけるこのような大きな変革は、市民社会組織、地方レベルから国際レベルに至るまでの政府機関、そして民間セクターの協力があって初めて可能になります。多様な個人と組織が手を取り合い、力を合わせ、共通の関心を持つ個々の課題に取り組むことが必要です。そしてその協力には、参加者同士の信頼を深めることが必要でしょう。
文明は長い年月をかけて築かれるもので、重要な目標として将来世代の繁栄が含まれなければなりません。若い世代の声にもっと注意深く耳を傾け、彼らが発するメッセージに留意する必要があります。さまざまな世代、職業や地位の人々とのコミュニケーションを促す必要があります。未来について語り、社会的論点になるような広い議論のテーマとし、今のリーダー達の決断に影響を及ぼすことが必要です。私たちの子どもたちの未来をむしばみ、彼らがこれから生きていく環境の質を悪くするような決断を、私たちはもうこれ以上、下し続けることはできません。私たちの未来は人間という存在の中に大切なものとして守っていきたい道徳的価値観によって築かなければならないのです。記念シンポジウム(8月):受賞者と若者によるパネルディスカッション
提言の発表の後、受賞者と若者によるパネルディスカッションが行われました。
パネラー
【ブループラネット賞受賞者】
エリック・ランバン教授(2019年受賞者)
ブライアン・ウォーカー教授(2018年受賞者)
【ユースメンバー】
佐座 マナさん(一般社団法人SWiTCH)
小林 海瑠さん(生物多様性わかものネットワーク)
伊与田 昌慶さん(国際環境NGO 350.org Japan)
【コーディネーター】
今村 尚徳氏(朝日新聞DIALOG編集長)パネルディスカッション
エリック・ランバン教授
「実践的、現実的な要求をすることと同時に、夢を持つことも大切です。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの有名な「私には夢がある」というスピーチがあります。私は皆さんに「あなたの夢は何ですか」とうかがいたい。積極的に挑戦することも大切です。こういう取り組みをすることで不安も軽減されます。なぜなら、問題解決のためにただ立ち止まっているのではなく、どこかへ向かって進んでいるからです。」
ブライアン・ウォーカー教授
「チャレンジとは頭の中に大きな絵を描き続けること、そして、その大きな絵を扱うために、時には協力しながら取り組む必要がありますが、個々の構成要素を扱うことができるようになることです。このようにいろいろ取り組みのスケールを変えるのは簡単ではありません。今のレベルで自分たちが行っていることが全体へ影響を与えられていないと落胆しがちですが、これは若者たちにとってやりがいのあることだと思います。大きな絵を扱う人、細かい部分を扱う人がいて、若者が種々のレベルの関心を生み出していくのか楽しみです。」
佐座 マナさん
「一人一人が地球のことを自分事としてほしい。若者の提言にあるのは最低限行わなければならないこと。実行には皆さんの決意が必要だと思う。新しいものにチャレンジしよう、マインドセットをかえよう、若者を応援しようとしていただけるとありがたい。どうしたら大人世代が若者たちをサポートできるかという対話も必要だと思う」
小林 海瑠さん
「若者の環境提言は最低限のレベルのものと思うが、政治家、自治体から見ると高い目標と見られるだろう。このギャップを埋める取り組みが重要になってくる。環境問題への取り組みを訴える際に、危機意識をあおるのではなく、生物多様性のすばらしさを感じてもらえるようなプラスのアプローチを大切にしたい。」
伊与田 昌慶さん
「落ち着き、満ち足りたように思える生活を送れるのは何も知らないから。科学者の声に耳を傾け、パニックになることがまず必要なことである。環境問題を解決するためには、ジェンダー不平等など環境以外の社会の問題も変えていくために、いろいろな人々との連帯が必要だと思う。」
記念シンポジウム(8月):動画
プログラム
-- 第1部
0m 0s : 第1部開会
6m 18s: 島村琢哉理事長 挨拶
14m 34s: 林良博選考委員長 挨拶
19m 17s: 真鍋淑郎博士からのメッセージ
23m 30s: エリック・ランバン教授 講演
40m 02s: ブライアン・ウォーカー教授 講演
57m 23s: デイビッド・ティルマン教授 講演
-- 第2部
1h 14m 55s: 第2部開会
1h 15m 59s: ユース環境提言 発表
1h 37m 56s: 受賞者共同提言 発表
1h 45m 04s: ランバン教授、ウォーカー教授によるコメント
1h 47m 13s: パネルディスカッション -
25周年(2017年)
報道声明発表(9月)
9月7日に日本外国特派員協会で、ロバート・ワトソン博士(2010年受賞)、ジェーン・ルブチェンコ博士(2011年受賞)、トーマス・E・ラブジョイ博士(2012年受賞)がおよそ60名の報道関係者に向けて報道声明「岐路に立つ地球環境・解決策は存在する・行動に移す時は今」を発表しました。
学生との交流・講演会(9月)
9月8日に東京大学伊藤国際学術研究センターで,第1部は3名の歴代受賞者(ロバート・ワトソン博士、ジェーン・ルブチェンコ博士、トーマス・E・ラブジョイ博士)が都内の高校生, 大学生とのディスカッションを行い,第2部は「曲がり角にさしかかった地球問題。今からでも間に合う!」というタイトルで歴代受賞者3名が記念講演,その後,井田徹治氏(共同通信社編集委員兼論説委員)他5名の著名なパネラーを交えてディスカッションを行いました。参加者はおよそ150 名でした。
パネラー
- 小野 洋氏
- 環境省大臣官房審議官 地球環境局担当
- 枝廣 淳子氏
- 東京都市大学環境学部 教授、幸せ経済社会研究所 所長
- 小林 茂樹氏
- 中部交通研究所 主席研究員、環境省IPCC国内連絡会 WG3 委員
- 末吉 竹二郎氏
- 国連環境計画・金融イニシアチブ 特別顧問
- 日比 保史氏
- コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 代表理事
提言発表(10月)
パリ協定遵守に向けた世界への呼びかけ:ブループラネット賞歴代受賞者31名の共同声明
シンポジウム(11月)
11月16日に国連大学エリザベス・ローズ国際会議場において、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンとの共催でシンポジウム「"文壇からつながり"へー変革する世界に生きる私たちができること」と開催した。
第1部の歴代受賞者による講演では、トーマス・E.・ラブジョイ博士 が「真の生物多様性とは、全ての命がさまざまにつながり合い支え合うこと」というテーマで、パバン・シュクデフ氏 (2016年受賞)が「全地球的な"つながり"とそのシステム:持続可能な経済への考察」というテーマで、コンサベーション・インターナショナル(1997年受賞)プレジデントのジェニファー・モリス氏 が「生物多様性と経済の関係、また日本社会とのつながり」というテーマで講演した。
第2部では、歴代受賞者に加え、ファシリテーターに枝廣淳子氏(東京都市大学環境学部教授)、パネラーに今井通子氏 (登山家、株式会社ル・ベルソー代表取締役)、鈴木敦子氏 (株式会社環境ビジネスエージェンシー代表)、高田あかね氏 (株式会社 アレフエコチーム)、中島美紗子氏 (国際基督教大学4年生)をお招きし、パネルディスカッションを行った。 -
20周年(2012年)
歴代受賞者ロンドン会議・会見(2月)
UNEPでの発表に備え、2月8日から10日にかけて第1回受賞者の真鍋淑郎博士を含む14名の受賞者がロンドンに集い、各人がそれぞれに執筆した論文を踏まえ討議し、共同論文を完成しました。
会議最終日の10日には記者会見を開き、ワトソン博士が12項目のキー・メッセージを明らかにし、「気候変動や生物多様性の消失、貧困問題の解決のため、世界は早急に行動する必要がある」と訴えました。
UNEPでの共同論文発表(2月)
第12回国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合本会議で歴代受賞者による共同論文「環境と開発への課題:緊急に成すべき行動」を発表しました。
共同論文ロンドン講演(3月)
地球環境問題解決に向けた歴代受賞者ならびに当財団の活動を広く海外にアピールすべくこの共同論文をロンドンで開催された国際会議「Planet Under Pressure: New Knowledge Towards Solutions」(2012年3月)において発表した。 この会議は,UNESCOやInternational Council for Science等の協賛で開催され,アメリカ科学振興協会会員をはじめ,ノーベル賞受賞者 を含む3千名を超す世界的科学者が集り,地球環境問題について様々な視点から議論がなされた。 会議のオープニングで,2010年のブループラネット賞受賞者であるワトソン博士が大聴衆を前に受賞者共同論文を力強く紹介したのをはじめ,展示会場には旭硝子財団のブースを設け財団やブループラネット賞の紹介をしたのに加え, 財団はオープニング・レセプションのスポンサーを務めた他,ウェブサイトや会場での配付資料にも協賛者として財団の名前が紹介される等,同会議への参加出展は, またとない海外広報の機会となり,財団の活動の国際的周知に大きく寄与した。
リオ+20での記者発表(6月)
2012年6月17日(現地日付)に,リオデジャネイロ(ブラジル)で開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)のジャパンパビリオンで,田中理事長,林良博選考委員長,鮫島専務理事出席の下,2012年度(第21 回)ブループラネット賞受賞者の記者発表を行った。田中理事長の主催者挨拶に引き続き,リオ+20に参加し来場した本年度受賞者が林選考委員長から紹介された。受賞者のリース教授,ワケナゲル博士,ラブジョイ博士は会場内の自席から登壇し,それぞれ受賞の辞を述べた。その後行われた質疑応答では,記者から多くの質問が発せられ,受賞者との間で活発なやりとりが行われた。
シンポジウム
受賞者記者発表に続きジャパンパビリオンで,歴代受賞者4名が参加し,2012年2月20日にナイロビで開催された第12回国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合本会議でワトソン博士から発表された歴代受賞者共同論文「環境と開発への課題:緊急に成すべき行動」を踏まえたシンポジウムが開催された。パネリストとして出席した歴代受賞者は,ワトソン博士(2012年受賞),ゴールデンベルク教授(2008年受賞), コンサベー ション・インターナショナル(CI)(1997年受賞)のミッターマイアー博士,国際自然保護連合(IUCN)(1993年受賞)のセンダションガ博士。 最初に安田事務局長から受賞者が紹介され,その後各受賞者がパネリストとして各々の考えを発表した。 引き続き質疑応答に入り,会場から熱心な質問が多数寄せられた。パネラーは専門的見地から丁寧に応答し, 会場と活発な意見交換をした。
レセプション
歴代受賞者によるシンポジウムの後,同会場でレセプションパーティーを開催した。パーティにはシンポジウムでパネリストを務められたワトソン博士,ゴールデンベルク教授,ミッターマイアー博士も参加され,鮫島専務理事から感謝の挨拶が述べられた。また,多数の出席者から2012年度ブループラネット賞受賞者のリース教授,ワケナゲル博士,ラブジョイ博士へ祝福の言葉が相次ぎ,受賞者と出席者の笑顔が絶えない和やかな雰囲気のレセプションとなった。
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10周年(2002年)
記念講演会 (5月)
日時 2002年5月14日
場所 経団連会館・経団連ホール
テーマ 「青い地球の未来へ向けて」2001年に地球環境国際賞「ブループラネット賞」が10周年を迎えたことを記念して、550名余の参加者のもとに記念講演会を開催しました。はじめに、環境問題への理解を深め、その解決へひとりでも多くの方々が参加されるようにとの期待を込めた瀬谷博道理事長の挨拶があり、続いて近藤次郎理事・顕彰選考委員長による基調講演が行われました。午後のセッションでは、英国のノーマン・マイアーズ博士(2001年受賞)、米国の真鍋淑朗博士(1992年受賞)、同じく米国のティオ・コルボーン博士(2000年受賞)がそれぞれの専門分野についての最新の研究結果や情報を交えて熱心に講演されました。これらの講演は、石弘之東京大学教授の巧みな総合司会により進められ、会場を埋め尽くした聴講者と講演者との間で、活発な質疑応答が行われました。
基調講演
近藤次郎選考委員長
「ブループラネット賞10年の歩み」
球環境問題は、人間の活動が原因で地球の環境に悪い影響が生じているものを言います。人類が地球上に現われたのは約500万年前ですが、ヒトは環境を変えて発展して来ました。それは文明ですが、人口が増え、文化や技術が発達して、現在は多くの矛盾が生じています。地球規模の環境問題は、人間を中心に据えて眺めてみますと、我々を取り囲む大気、水、土、生物のすべてに影響をおよぼしております。代表的な問題としてオゾン層破壊、気候変動、生態系の保全、環境倫理・哲学、環境ホルモンなどが挙げられます。これまで10年間に表彰を受けられた20件のブループラネット賞受賞者の方々の業績を簡潔に紹介いたしましたが、先見性と情熱に溢れた活動が、地球環境分野の広い範囲にわたって進められてきたことを改めて感じます。今後もさらにその範囲が広がってゆくものと予想しています。受賞者講演
ノーマン・マイアーズ博士(2001年受賞)
「環境保全の研究における最近のブレークスルー ―持続可能な開発のために ―」
最近の私の研究テーマから3つを選んでお話しします。一つは生物多様性のホットスポットです。生物種は地球全体に広く一様に分布しているのではなく、高密度で生息しているごく狭い限られた地域があります。地球上の25ヵ所、陸地面積のわずか1.4%の地域に、植物種の40%、動物種の30%が生息しています。これら25ヵ所の環境保全に努めることは、生物多様性の維持に極めて効果的です。二つ目の研究では、農業、化石燃料、道路輸送、水、森林、漁業などに対する世界各国政府の補助金が、環境と経済の両方に悪影響をおよぼしていることが分かって来ました。各国の納税者は補助金と環境修復費という、相矛盾する費用を支払い、二重の負担をしていることになるので、多くの国が補助金の削減に挑戦し始めています。三つ目の研究では、発展途上の17カ国と移行期にある3カ国の合計10億人を越える人々が、近年、購買力の向上にともなって、大量消費の食習慣を身につけ、自動車の保有量を拡大しております。その結果、水や穀物の不足および大気汚染など、環境への深刻な悪影響を引起こしています。どのような対応を取るべきかが、重要な課題となって来ています。真鍋淑朗博士(1992受賞)
「地球温暖化と世界の水資源」
地球温暖化は起こっているのか?なぜ起こるのか?将来どうなるのか?ということについてお話しします。海洋-大気-地表のシステムを結合させた数学モデルを用いて、気候変化の予測を試みておりますが、北半球の平均気温を見ますと、20世紀後半の気温上昇は明瞭でCO2濃度も急上昇しています。温室効果ガスは互いに相乗効果があって、例えばCO2濃度がわずかに増加したために温度が少し上昇すると、温暖化効果を持つ水蒸気が大量に発生して、温度がさらに上昇することなどが起こります。温暖化に伴って地球の降水量、蒸発量が上昇するようになります。降水量の変化は地球全体で均一に広がるのではなく、緯度の違い、内陸と海岸側など、地域によって異なります。そして、流水量の増加する川がある反面、現在の半乾燥地帯の土壌水分がさらに減少して砂漠化が進むなど、極端な現象があちこちに広がります。現在の予測では、21世紀が進むとともに世界の農産地帯で水不足が深刻化し、水資源の管理が人類にとって大きな挑戦課題になると予想しております。ティオ・コルボーン博士(2000年受賞)
「私たちは生来の機能と形を子孫に継承してゆけるのだろうか」
化学物質が日常の生活の中に浸透することを放置しておいてよいのか?ということについてお話しします。化学物質はすべての人々の体内から検出され、その影響は、すべての世代に及んでいます。特に子宮内で内分泌撹乱物質、いわゆる「環境ホルモン」にさらされますと、胎児は特に大きな影響を受けます。胎児期にさらされると、生理、免疫、神経などの機能障害、生殖機能の発育に影響が現われ、出生後には知能、行動、免疫機能がそこなわれます。また、成人に対しても、自己免疫不全、生殖腺癌、不妊の原因となることが証明されています。そして影響は女性よりも男性にとって、より大きく危険性が高いのです。日本では1970年代以降、胎児死亡率が女子より男子の方が高くなっているという報告も出ています。人類は生物圏の化学的組成を変化させ続けていますが、私たちの多くは、こうした活動がどのような意味を持つのかを理解していないといえます。内分泌撹乱物質の濃度と影響について、国際的な研究協力を進めて、その結果を公表することは、緊急の課題です。手後れになる前に、生来の人間としての機能と形を守るために、子宮環境を守る行動を起こしましょう。総合司会 石弘之教授