食品ロス(フードロス)【フードバンク】

持続可能な発展

食品ロス(フードロス※1

ミズ

 食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことを指します。国連世界食糧計画によると世界では最大7億8300万人もの人びとが飢餓に苦しんでいますが※2、それにもかかわらず食品ロスは先進国、開発途上国のどちらにおいても発生しています。2022年には、世界で10億5000万トンの食料が廃棄されました。これは、生産された食品の約30%が失われたことを意味します※3。その原因は、生産段階での品質の不適合や外食産業や小売店での在庫管理の不備、家庭での賞味期限切れなど様々です。

グラフ

 食料の不足と過剰が同時に生じる状況は、農業、土地利用、貯蔵、輸送、包装、加工、小売、消費からなる食料システム全体に関わる問題です。

 さらに、世界の温室効果ガス排出量のうち、食料システムに由来する割合は約21〜37%を占めると言われています※4。また農業は、森林伐採や土地改変、化学肥料や農薬の使用による土壌劣化や水質汚染を引き起こすことがあります。大量の水資源を必要とする畜産業では、牛肉を1kg生産するために15000リットルもの水が必要です。

 食品を無駄にすることは、その生産のために使われた資源も無駄にするということであり、食品ロスは環境問題と密接に関係しているのです。

※1 フードロスとは、生産、加工、流通の段階で発生する食品ロスのことであり、厳密にはこの二つは同じではありません。
※2 https://ja.wfp.org/global-hunger-crisisより
※3 https://news.un.org/en/story/2024/03/1148036より
※4 https://www.ipcc.ch/srccl/chapter/chapter-5/より

問題解決に向けた取り組み:フードバンク

 食品ロスの解決のための取り組みとしてフードバンクがあります。フードバンクとは、食品メーカーや食料品店、レストラン、個人などから食品の寄付を受け取り、それを必要とする人に再配布する活動のことです。日本では、生活困窮者などの支援と結び付けとらえられることが多いですが、海外では配布対象者を限定しない組織もあります。また、食品を提供する際の料金も無償の場合と通常より低価格に設定する場合があります。

 日本でフードバンクの活動に取り組む団体の数は比較的少なく300弱ですが※5、イギリス、フランスなど、数千もの団体がある国もあります。食品の取扱い量も大きく異なり、日本が年間2850トン(2018)であるのに対し、世界最大のアメリカでは年間739万トン(2018)と約2600倍にも及びます※6。ただし、日本と外国では食品廃棄物の発生量や社会保障制度、生活困窮者の数などが異なるため、この結果だけでそれぞれの取り組みを評価することはできません。

 ここでは諸外国のフードバンクの取り組みの特徴を紹介します。

○イギリス
イギリスでは、不要になった食品を個人が別の人に寄付することができるアプリがあり、ユーザー数を増やしています。スマートフォンで寄付したい食品の写真を撮ってアプリに掲載すると、その食品が欲しい人とのマッチングを行ってくれる無料のサービスです。多くのチャリティ団体もアプリを使って食品を受け取っており、イギリス最大のフードバンクとも提携しています。また、このアプリでは、ボランティアユーザーとして登録した人が提携先の飲食店や小売店を閉店後に訪れ、不要になった食品を受け取り、アプリに掲載し、配布する試みも行っており、ボランティアには78000人が登録しています。

○フランス
フランスでは、2016年に施行された法律によって、食品流通業者は、まだ消費可能な食品を意図的に消費できない状態にすることを禁止しています。業者はまず、食品廃棄物の発生予防に取り組み、発生してしまった場合は寄付など人が利用できる形で消費し、消費できなかった場合には家畜の飼料に転用し、それもできない場合は堆肥化またはエネルギー利用することとなっています。また、店舗面積が400㎡を超える大型小売店は、認定された慈善団体やフードバンクに対し食品の寄付に関する協定締結を提案することが義務付けられています。この法律に違反した場合の罰金に関する規定も設けられています。本法律の施行以降、食品の寄付量、フードバンクの数ともに大幅に増加しているそうです。

○アメリカ、イギリス、オーストラリアなど
 これらの国では、寄付した⾷品に起因する偶発的な事故から寄付者を保護する法律があります。寄付した食品による食中毒などの問題は、企業にとって大きな懸念事項であり、このような法律の存在は、企業などの寄付活動への参加障壁を低減する可能性があります。

※5 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank.htmlより
※6 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/#foreign 消費者庁 諸外国における食品の寄附の実態等に関する調査より

    

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